アロマの禁忌 1 アロマの禁忌から香害を考える
【禁忌】とは、薬や食品、生体に使用するもののうちで、ある条件を持つ人、あるいは状況において使用してはいけないというものです。
薬の場合はしっかりと添付書類に記載があります。薬剤師や医師に相談して気を付ける人も多いでしょう。
では香料は?
たかが香料、たかがにおい、という観点から見逃しがちですが、例えばアロマテラピーの精油の中でも禁忌は存在します。
しかし昨今、色々な疾患を持つ人が集まるであろう病院や調剤薬局ですら、外来の待合などでアロマを炊くのが流行していて、そんな所がかなり増えています。
これはその病院の医師や看護師、薬剤師が、「たかが精油=においが人体に影響を与える事などありえない」という思い込みに侵されているということですよね。
ですがアロマには効果があります。国によっては大まじめに治療法としてアロマを導入しているところがあります。日本のように「いい匂いさせとけばリラックスはするだろう」程度の使い方ではなくて、疾患の治療のために使われています。
医療従事者なら絶対に知ってるはずの事なんですが。
治療に役立つ効果があるという事は、つまり副反応もあるということです。
例えば高血圧の人の血圧を下げるアロマを低血圧の人に使ったら?
血圧下がりすぎて具合が悪くなる、ということもあり得ます。
アロマはその効果がある以上、甘く見て適当に使っていいものではないはずです。
それを特に日本では「たかがにおいにそんな作用があるわけない」と誤解したままの人が非常に多い。
医学の中では似たような誤解の歴史があります。
例えば漢方、和漢ですね。
明治維新からの西洋化で、西洋医学重視のために医学分野から漢方や和漢が排斥されたということがありました(1895年に帝国議会に請願が提出され復権)。
なぜ排斥されたかというと。
ぶっちゃけてしまえば「そのへんの葉っぱを煮詰めたり乾燥させたものを薬だなんて認めない」って事だったんでしょうね。西洋医学重視だから。切ったり貼ったり試験管で合成したり顕微鏡使わないのは医学じゃない、って風潮だったんでしょう。
日本っぽいですね。新し物好きというかなんというか。
でもやはり効果があるし慣れてるし、という声も多く、和漢薬や漢方薬も1967年に保険適用されるに至り、今では老年期疾患、婦人科疾患、小児疾患や生活習慣病等あらゆる医科で漢方・和漢薬が使われるようになっていて、その薬効が認められています。
漢方は統計の医学なので、長い歴史の中で多くの人が使う事で、いわゆる副作用がでる可能性がある事も解っていましたが、詳しい機序までは不明でした。ですが近年の西洋医学との併用で、その副作用の発生機序も解明されつつあります。
明治の排斥では「そのへんの葉っぱに薬効なんかあるわけない」とされたものに、効果も副作用もあり、それがやっと近年になって実証・機序解明されてきている。
例をあげると、『甘草』という漢方薬原料があります。そのものも使いますが色々な漢方薬に入っています。この甘草を使いすぎると、実は浮腫や脱力や不整脈などがが起きる事がある。
漢方医学では、科学的な観点からはっきりと何故なのかはわからないけど、統計学的にそうなる事が多いと、何百年も前から分かっていた。それが近年、西洋医学方面での解明も進み裏付けがなされ、「偽性アルドステロン症」とされて注意を促されています。
他には漢方・和漢薬では副作用に 脱力、間質性肺炎、ぜんそく、子宮収縮作用などなど結構しゃれにならないものもあります。その辺の葉っぱを煮詰めたものと甘く見てると、身体にこんな不具合が起きるんです。
こうして、漢方や和漢で言われてきた副作用が、西洋医学で科学的に裏付けされてきているのです。
何千年の歴史の中で、ここ五十年ほどで、やっと、です。
副作用はある、禁忌とすべき場合があるとされている。漢方や和漢と同じく科学的な機序ははっきりしないものも多い。けど、経験則で統計学的に副作用が多く出てきたのでアロマテラピストの皆さんは安全な施術の為にしっかりと禁忌を学んでいます。中には既にしっかりと神経毒性がある、光感作性がある等と実証されているものもあります。
つまり、良い匂いだからって何でも炊きゃあいいってもんじゃないんです。
アロマの効果を認めるならばこそ、その副作用が存在するという事実にも目を向け、受け止めるべきです。その科学的機序はこれから解明されるにしても、ないというわけではない。アロマテラピストさんたちの教本にきちんと書いてある。統計学的学問としての裏付けがあるのは、かつての漢方、和漢と同じです。
そしてアロマの精油の成分は、合成洗剤や柔軟剤、香料と重複するものもある。
いい匂いだから、この匂いをさせていれば気分がいいに違いない
怖い思い込みです。
ではこれら香料、精油にどんな副作用があるのか?
IFRAスタンダードやEUのレポートで徐々に科学的にも明らかになってきています。